レッドブルつばさと語ろう。③
(②はこちら)
なんで朝井リョウはおもしろいんだろう。
大内:
ふだん、どんなことで笑うんですか?
つばさ:
日常で?‥‥ある?
大内:
僕は、‥‥動物見たとき。
島野:
なんだそれ(笑)!
大内:
今日も、朝散歩していて、ハトがいたんですけど、ハトの首のところってすっごいツルツルしてるんすよ。で。
島野:
「で」じゃないよ。
つばさ:
俺は、自分がいつ笑うのか本当に思い出せない‥‥。
二人:
(笑)
つばさ:
笑わないんだよね、やっぱり。なんだろう、感情が表に出ない。
島野:
僕らも基本、出ないほうですよ。
つばさ:
日常生活の延長でコントを書くってことがあんまなくて。でも、それをやりたいと思ってて、メモもしてるのよ。でも、あまりおもしろくないなってなっちゃうんだよな。それがなんでなのかは、うまく喋れないけど。
島野:
ネタの核みたいなのは、どっから引っ張ってくるんですか?
つばさ:
‥‥出てくる。
島野:
ぽんっと?
つばさ:
これが、ほんっっっっとうに分からなくて。それがどっから出てくるのかが。まず第一条件として、ピンだから、一人でできることっていうのでいろいろ考えて。状況とかもいろいろ考えてみて、こういうのもあるよな、ああいうのもあるよなー‥‥で、出てくる(笑)。今までこういうこと聞かれて、ちゃんと言えたことないから、しっかり答えてみたいんだけど、なんなんだろ。どうやって出てくるんだろうな、まじで。自分が毎日どうやってネタ書いてるのか、書いているときじゃないと分からない。
大内:
めっちゃ分かります。特殊な気分ですよね。
島野:
じゃあ、書いたりやったりする上で、気をつけていることってありますか?
つばさ:
気をつけてることかぁ‥‥。
大内:
僕は、やる上で、無駄な動きを制御できるようにっていうのがあって。緊張しいなので、無駄な動きが本当に多い。
島野:
遊びとかじゃない、本当の無駄ね。
大内:
それは、お客さんにとって悪いノイズだから、本当に基本的だけど、それを抑えるっていうことを。
つばさ:
気にしていることっていうか、いい加減どうにかしろよって思うことなんですけど、‥‥大きな声が、うまく出せない。
二人:
(笑)
つばさ:
何年やってんだっていう。
島野:
でもそれまったく一緒です。
大内:
大きな声を出したいってことですか?
つばさ:
えっと、出す場面が多くて。感情をグワーって出す場面で、大きな声を出すんですけど、必ず、怒気が含まれる。
島野:
意図してないのに。
つばさ:
自分の映像とか見直すと、こいつずっと怒ってんじゃんって思っちゃう。本当は、怒ってる場面なんてちょっとしかないのに、全編怒りっぱなしの人みたいになっちゃうと、そうなると話変わっちゃうし、軸もブレるし。
大内:
僕は、基本出力を上げたいです。普通に声を張って出る声の大きさを太くしたい。
つばさ:
それだ!そういうこと!
島野:
俺もそれ!
三人:
本当にそれ!
島野:
下手に大声出しても、おもしろくないというか、笑えない大声なんですよね‥‥。
つばさ:
基本の声が小さいから、ベースで喋ってるセリフの声の大きさを大きくしようとすると、叫んじゃう(笑)。
大内:
中間がないんですよね。
つばさ:
でもあきらめたくない。これはやんなきゃ。
大内:
話は変わるんですけど、次にコントで試したいことってありますか?
つばさ:
んー、喜びたいかも。コントの中で喜びたい。これ答えあってるかな?登場人物が喜んでるっていうか、ハッピーなコントをやりたいっていう。でもそういうのって笑いになりづらいのかな。あとは、お客さんがゲロ吐くみたいな。
島野:
お客さんがゲロ吐く?
つばさ:
例えだけど、気持ち悪すぎてどうにかなっちゃうみたいな。笑い以外の感情をなにか特化させたものっていうのを実験的にやってみたい。マジでお客さんが怖がるとか。マジで泣くとか。よくあるような、オチで、ひえーとかじゃなくて、マジに。
大内:
意識すれば、できる気もしますね。
つばさ:
それも長尺じゃないとできないかなってところもあるし、一人でそういうことができるのかっていう挑戦もある。それでおもしろいっていうのを作れるのかという。
大内:
僕もやりたいことあって、脳って自分の都合のいいように解釈するって、あるじゃないですか。整合性を保つために、自分で自分を騙すみたいな。それをどうにか利用できないかなっていう。
つばさ:
あ、試してみたい手法、ひとつ思い出した。小説でよく「叙述トリック」ってあるじゃないですか。叙述トリック好きなんですよ。
島野:
どういうの読むんですか?
つばさ:
この前読んで、ほーと思ったのは『烏に単は似合わない』っていう、恋愛ファンタジーみたいな小説で。もっと前にも、叙述トリックの本は読んだことがあったんだけど、でも、それは「叙述トリックですよ」って言われて読み始めたから、もうストーリーに集中できないというか、まじめに読めなかったんだけど。『烏に単は似合わない』は‥‥あ、ネタバレっぽいけど大丈夫?
島野:
大丈夫っす。
つばさ:
和風の恋愛ファンタジーみたいな設定なんだけど。まず、軸がめっちゃおもしろい。叙述トリックとか関係なく。でも、そこは、この人が?みたいな叙述トリック的などんでん返しがあって。そういう、なんだろうな、急にお客さんを驚かせてみたいというか。朝井リョウの『何者』とかもそうかもしれない。
島野:
あー、あれすごいですよね。
つばさ:
あれは、久々に本読んでて、自分の心臓の鼓動が聞こえてきた。まじかまじかみたいな。急にクルってひっくり返って‥‥あ、朝井リョウの話になっちゃう(笑)。
島野:
朝井リョウ好きですもんね(笑)。
つばさ:
本当に大好き。『何者』はたしか、一人称なんですよ。語りの部分も多いから、読んでる側の感情は乗りやすいようになってて、さらにそこで最後、急にガッてなる。だからおもしろい。そういうのをコントでもできたらおもしろそうだな。
島野:
俺も朝井リョウ読んだことありますけど、そんなには読んだことないすね。
つばさ:
大内:
朝井リョウ感みたいなことですか?
つばさ:
朝井リョウの主張がけっこうすごくて。インタビューとかも全部読んでて、その内容からだと、朝井リョウの主張って、なんかこう、読者の手も足も縛りつけて、頭つかんで、あーーー!って言うような主張なの。言いたいことが明確にあるのよ。その言いたいことを、読者にいちばん響かすにはどうしたらいいかっていうので、こういうストーリーにしようみたいなことをしてて。
島野:
はー!
つばさ:
その流れの作り方もすごいし、システム的な部分もいい。プラスアルファで、そこに出てくる主人公たちも、そのために操られている人たちではないっていうリアリティというか雰囲気というか、それがうまく掛け合わさっているのがいい。基本的には、そういう作り方なんだけど、システム的なところか、人物的なところか、どっちかに偏る作品もあって。『世にも奇妙な君物語』っていう小説は前者で、世にも奇妙な物語っぽい話をひたすら書いてる。それなんかはもう完全にシステム。『武道館』は後者で、人物を通して、アイドルってものを描き出そうとしていたんだなとか。そういうおもしろさがある。
島野:
それはたぶんコントでもできますよ!
つばさ:
見せたいところを明確に決めて、そこにいかに導くか。
島野:
縛りつけるって出てきましたけど、僕は逆に、油断してもらうっていうのは頭の中にあります。最初、笑ってくださいーなのに、途中から、みたいな。なので、朝井リョウの話は聞いていて今ゾクゾクしました。
つばさ:
一人だったら、その人を見るしかないから、感情移入させやすいのかなというか。そこでクルっていう裏切りがあったり、っていうのもやりたいかなっていう思いもちょっとあったり。
(つづきます。)
(適当な記憶と、その場のノリで喋っているところもあるので、意味不明だったりそこらへんご理解ください!よろしくお願いします!)text & photo by しまの